野山で静かに過ごしたい

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日帰り登山、アウトドア、国内・海外旅行、移住先選定。都心6区に住みつつも、喧騒を離れたシンプルライフを満喫しています。

山岳遭難データに見る、登山で危険な日本の山ランキング【2018】

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昨日警察庁が発表した「平成30年における山岳遭難の概況」によると、2018年に全国で発生した山岳遭難は2,661件、遭難者は,3129人でした。残念ながら、統計が残る1961年以降で最多となったそうです。

2018年の山岳遭難、61年以降で最多 警察庁 - 毎日新聞

山岳遭難が最多 バックカントリースキーの外国人目立つ:朝日新聞デジタル

元データはこちらから確認できます。

山岳遭難・水難|警察庁Webサイト

特に増えている案件と、「平成30年における山岳遭難の概況」の各データをグラフで見ていきます。後半では、危険な山ランキングの作成にも挑戦しました。

2018年 山岳遭難の概況

右肩上がりで増えている案件

  • 中高年の登山ブームを背景に、山岳遭難自体が増加している
  • 日本の雪質がネット上で評判になり、バックカントリースキー目的の外国人観光客が数年前から増えた
  • 単独登山者の割合は37.4%。平成26年以降最多

年齢層別 山岳遭難者

目的や態様が全て含まれていることには注意が必要ですが、年代別のグラフです。50代以上の割合が多いものの、30代以下も満遍なく、年齢にかかわらず油断は禁物です。

目的別 山岳遭難者

 

目的は、登山が最多。山菜・キノコ採り、ハイキング、観光が続きます。

態様別 山岳遭難者

遭難の原因は道迷いがトップで、滑落、転倒、病気、疲労が続きます。

特に登山で危険な山は、どこなのか?

登山をたしなむようになってから、山岳遭難のデータを見ると「どこの山に行くときに気をつければ良いのだろう?」と気になるようになりました。

当然、登山に行くときは、常に遭難や滑落の危険と隣合わせであることを認識して、GPSアプリや登山ウェアの装着など、最低限の対策を行うのが前提です。

quiet-nature.hatenablog.com

 

問題は、しっかり対策をしていても危険回避が難しい山です。そのような山をデータから探してみることにしました。

都道府県別 山岳遭難者

まずは、都道府県から絞り込みます。

 

長野県が断トツのトップで、北海道、東京、山梨、神奈川と続きます。

遭難人数と死者・行方不明者割合を散布図でも見てみます。

死者・行方不明者割合は、遭難者人数全体が少ない場合、特別に高くなる場合があるので、遭難人数100人以上の都道府県に注目します。その12都道府県のうち、死者・行方不明者10%をラインに、2グループに分けました。

遭難人数は多いものの、死者・行方不明者の割合はそこまで高くない都道府県はイエローのグループで、東京都・神奈川県・(富士山を擁する)静岡県・北海道などが含まれます。

一方、遭難人数が多く、死者・行方不明者の割合も高めが、ピンクのグループ。中でも、長野県・山梨県新潟県は要注意の都道府県です。

危険な山のランキング化が難しい理由

山域別の山岳遭難データを調べてみて、以下の状況が分かりました。

  • 全国のデータをまとめる警察庁は、山域別データを公開していない
  • 都道府県警察では、山域別情報を公開していないところがある(新潟県、神奈川県)
  • 山域別情報を公開している都道府県でも、集計困難
    • データが完全ではない(山梨県
    • ExcelではなくPDF
    • 集計前の個別の遭難情報

山岳遭難の都道府県データは、どこの都道府県県警が出動するかが左右されることもあるのか、データとして残っているようです。一方、山域別データは網羅性に欠けます。

あくまで予想ではありますが、もしかすると、特に遭難の多い長野県や北海道などを除いて、山域別データ公開は、山岳遭難の削減にそこまで貢献しないのかもしれません。データ化にはそれなりに手間がかかりますのでが、人手が限られる場合、救助活動自体や講習等の啓蒙にリソースを割いているとすれば、それも納得です。

都道府県ごとの山岳遭難統計

調査で見つけた、都道府県ごとの山岳遭難統計は以下の通りです。

長野県

山岳遭難発生状況(平成30年中)/長野県警察

山梨県

山梨県警察/山岳遭難発生状況

個別の山岳遭難ファイルはありますが、すべては掲載していないとのこと。

北海道

北海道警察ホームページ-安全登山情報-

年次だけでなく、月次でも報告。

新潟県

平成30年 山岳遭難発生状況|新潟県警察

統計概要データのみ。個別の山情報はなし。

群馬県

群馬県内の山岳遭難発生状況(平成30年中) 

岐阜県

平成30年中の山岳遭難・山岳警備活動|岐阜県山岳遭難防止対策協議会

神奈川県

神奈川県警察/登山を楽しく安全に/平成30年山岳遭難発生状況

山域別発生状況は記載がありませんが、登山ルート危険箇所の説明があって役立ちます。丹沢や箱根は人気エリアですが、要注意です。

神奈川県警察/登山を楽しく安全に 登山ルート危険箇所

静岡県

平成30年における山岳遭難の概況|静岡県警察本部

山岳情報/静岡県警察

山岳統計のページ

滋賀県

京都新聞が県警にヒアリングした結果が載っています。

kyoto-np.jp

 

東京都

平成29年が最新ですが、各事案の詳細が載っています。

平成29年 山岳遭難発生状況

 

奥多摩消防署でも山岳事故の情報を発信しています。

www.tfd.metro.tokyo.jp

兵庫県

兵庫県警察-県警トピックス(山岳遭難・水難発生状況)

29年が最新データ。昨年は3月に更新されたようですが、今年は6月時点でもまだ30年のデータはアップされていないようです。

兵庫県内における山岳遭難発生状況(平成25年~平成29年)|兵庫県警察本部

登山で危険な山ランキング(条件付き)

  • 「平成30年における山岳遭難の概況」で、山岳遭難者が100人を超える12都道府県をピックアップ
  • うち、平成30年の山域別の山岳遭難データが公開されている
  • PDFデータしかない場合も集計が簡易なよう、死者・行方不明者に限定して集計

を条件に、長野県・北海道・群馬県岐阜県静岡県 の5都道府県限定データにはなりますが、結果は以下の通りです。

ランキング 山域 死者・行方不明者
1 北アルプス 33
2 南アルプス 7
2 八ヶ岳連峰 7
2 富士山 7
5 妙義山 5
6 日光白根山 2
6 安倍山系 2

北アルプスは別格です。そのうち、槍穂高13件、後立山が8件です。

2件以下の少数では個別の事情もあるでしょうが、33件ともなると、注意で回避できるレベルを超えてきます。

山と渓谷など雑誌でよく特集されていますが、魅力的な一方、危険も大きいということですね。

山と溪谷2019年7月号「槍ヶ岳と穂高岳」

山と溪谷2019年7月号「槍ヶ岳と穂高岳」

 

 意外にも、富士山が7件もあります。しかし、上級者でも事故に遭うアルプスとは事情が異なりそうです。

2009年にトムラウシ山遭難事故が発生した北海道は、これまた意外にも、死亡・行方不明者が発生が集中している山はありませんでした。

山岳救助を知る

圧倒的に山岳遭難数の多い北アルプス。このエリアを担当する長野県警察山岳遭難救助隊と、山岳救助ボランティアを描いた漫画があります。

 これを読むと、山とは離れて生活している一般の人でも、山岳救助がどのように行われているのか、事故はどうして起こるのか、想像を巡らすきっかけになります。

どうしても人が亡くなりますので、登山を始める前に読んだ時は、とても恐ろしく感じて、読破できませんでした。

登山の魅力を少しでも知ってから完読してみると、人生観が変わるような漫画です。

こんなに恐ろしいのに、また山に行きたくなるのが、本当に不思議です。

なお、実際の長野県警も、島崎三歩の「山岳通信」を毎週発行しています。

最後に

私自身はリスク許容度が低く、事前調査は周到に行う方です。いつも山を登る時、そんなに難易度が高くない山でも「今日はこの山から無事に帰れないかもしれない」という思いが頭をよぎります。

今はもう、GPSアプリなしで登山するなど考えられず、分岐の度に道を確認しているくらいです。

山と渓谷の遭難対策系の特集も、目を通すようにしています。

山と溪谷2016年2月号 [雑誌]

山と溪谷2016年2月号 [雑誌]

 

漫画 岳でもわかるとおり、山を相手にする限り危険はゼロにはならないので、油断せずに引き続き登山を楽しみたいと思います。