ヤマレコで累積標高差を調べて、登山の難易度をチェック
先日の記事で「累積標高差」という言葉を使いましたが、ヤマレコの参考記録では、この「累積標高差」を、上り・下りごとに確認できます。
登山コースのキツさがわかる指標
標高は、東京湾の平均海面を0mとし、それを基準とした土地の高さです。
山頂の標高は、Wikipediaなどでも簡単に調べられます。
一般的には、アルプスなど標高の高い山の方が上級者向けというイメージがありますが、登山開始地点の標高も高ければ、実はそれほどハードではありません。
登山口と山頂の標高差を調べるだけでも、そのコースがどれくらいキツそうか、だいたいのイメージは掴めます。
しかし、スタート地点と山頂の標高差が小さくても、アップダウンが激しいコースなら、それだけハードに感じられるもので、その詳細は標高差からは読み取れません。
アップダウンの多さ知るために活用できるのが累積標高差です。ヤマレコには、山行記録のGPSデータを元に累積標高差を表示してくれる、ありがたい機能があるのです。
累積標高差とは
それぞれ、登り部分の標高差の総和、下り部分の標高差の総和のことです。
累積標高差と累積標高の違い
山と渓谷社のガイドブックでは「累積標高差」と表記されていましたが、ヤマレコでは「累積標高」と表記されています。同じものを指しているようです。
ヤマレコでの累積標高差の確認方法
例として使う山行記録は以下です。
陣馬山(栃谷尾根コース・積雪は皆無) - 2019年01月19日 [登山・山行記録] - ヤマレコ
任意の山行記録ページにて、地理院標高グラフの右下の「グラフを拡大」をクリックします。
上り・下りごとの累積標高が表示されます。スタート地点とゴール地点の標高に大きな差がなければ、上り・下りの累積標高は、だいたい同じになります。
山行記録で見られる、距離を横軸とした標高の折れ線グラフの他に、時間・時刻を横軸とした折れ線グラフも表示できます。
山頂で休憩すると、グラフが富士山みたいな形になりますね。
様々な山の難易度
山の難易度を相対的に知るには、ヤマクエはおもしろいサイトです。
さらに踏み込んで、自分の課題や志向に合っているかを突き詰めるには、まずヤマレコに山行記録を登録して、累積標高差や距離をトラックします。そして、そのときの自分の体感・疲労度を覚えていて、他の人の山行記録と比較します。
今回は、だいたいの規模感を知っていただくために、特に人気の高い山のデータを掲載しますので、参考にしていただければ幸いです。
なお、1つの山でも複数のコースがあり、それぞれ難易度は異なります。
景信山〜高尾山
景信山〜高尾山 - 2018年09月23日 [登山・山行記録] - ヤマレコ
合計距離: 10.93km
最高点の標高: 720m
最低点の標高: 186m
累積標高(上り): 756m
累積標高(下り): 882m
筑波山
筑波山 - 2018年10月20日 [登山・山行記録] - ヤマレコ
合計距離: 5.95km
最高点の標高: 836m
最低点の標高: 235m
累積標高(上り): 594m
累積標高(下り): 626m
陣馬山
陣馬山(栃谷尾根コース・積雪は皆無) - 2019年01月19日 [登山・山行記録] - ヤマレコ
合計距離: 12.07km
最高点の標高: 844m
最低点の標高: 198m
累積標高(上り): 824m
累積標高(下り): 832m
那須岳
標高は高いものの、登山開始地点からの標高差・累積標高差ともに少ない例です。こちらのデータのみ、NBHtmさんの山行記録です。
那須岳(茶臼岳) - 2019年01月06日 [登山・山行記録] - ヤマレコ
合計距離: 8.06km
最高点の標高: 1877m
最低点の標高: 1262m
累積標高(上り): 691m
累積標高(下り): 713m
栃木の那須岳の山頂の標高は1,915mですが(データ上の最高地点は1,877mですが)、スタート時点の大丸駐車場の標高は約1,300mで、累積標高差は700m程度です。
山頂とスタート地点の標高差と大きな差がないので、アップダウンが少ない山だということがわかります。
もっとも、拝見した山行記録は1月の風雪の中のものです。無雪期とは難易度が大きく異なり、恐れ入るばかりです。
比較の例(筑波山と陣馬山)
累積高低差が同じなら、距離が短い方が、傾斜が急ですので、よりハードです。
しかし累積標高では、陣馬山の方がトータルのアップダウンは多いです。
さらにこの累積標高を合計距離で割ると、筑波山の方が傾斜が急だとわかります。
(コース全般的に平地で、特定箇所だけ異様に傾斜がキツいというパターンもあるでしょうが、事前にグラフを見て、そうでないことだけ確認しておきます)
長い距離を歩くのは平気だけれど、傾斜が急な山を避けたいときは、陣馬山の方が向いています。逆に、上りはキツくても、短い行程が望ましい場合は、筑波山の方が向いています。
こうして、比較的簡単に調べられる山頂の標高の他、任意のコースの総距離・累積高低差のデータも入手できれば、分析の幅が広がります。自分に得意な山を選んだり、あえて苦手な山を選んで鍛錬するなども良さそうです。
所感
この他に、皆さんのヤマレコ山行記録にて、岩場や鎖場など難易度の高い箇所がないかを確認すれば、極力危険の少ない登山コースを事前に選べます。
書籍の登山マップにも随分お世話になっていますが、複数ある登山コースを全て網羅するとなると、たくさんの登山家の叡智に支えられたヤマレコの記録に勝るものはありません。
インターネット・ GPS ・ヤマレコなどが存在しなかった頃を想像すると、今は登山のハードルがずいぶん低くなったように思います。
真の冒険家には物足りないかもしれませんが、趣味として穏やかに登山を楽しみたい人間にとっては、ありがたい世の中になったものです。
先人たちの作品や記録に感謝しながら、今日も次の登山コースを探します。